える虫の虫籠

えーる@虫統一のブログです。

【構築記事】レート2200達成虫統一

どーも。える虫です。

今回、ポケモンチャンピオンズのシーズンM-1で

最高レート2296

最終レート2214

を達成することができました。

f:id:pocketyell292:20260516155321j:image

f:id:pocketyell292:20260516155915j:image

むしタイプの底力を出すことができて満足しておりますが、願わくば、さらに上を目指したい。

より上を目指すためにも、今の状況を構築記事としてまとめました。主に「なぜその構成になったのか。」という理由の部分を書いております。

f:id:pocketyell292:20260516225051j:image

ちなみに対戦数は不明ですが、最終日前日の時点で勝利回数だけでも900試合を超えていたので途方もない数をこなしていたと思います。このゲーム、やめ時が分かりません。

【構築経緯】

メガシンカ環境であるからには、メガシンカをエースに据えたい。むしタイプのメガシンカ4体の中で、最も安定して「抜きエース」の役割を果たせるのがメガカイロスだと考えたため、メガカイロスを軸に据えた。

積まなければ火力が出ないハッサム、初速が遅いヘラクロス 、先制技一発でやられてしまうスピアーのいずれにも出せない安定性がカイロスにはある。

物理エースはカイロスが務めるので、カイロスが止められがちなブリジュラスやギルガルドに圧力をかけられる強力な特殊アタッカーとしてウルガモスも採用。

次に、カイロスと相性の良い先発要員として、ねばねばネットを撒けるオニシズクモとステルスロックを撒けるバサギリを採用。この時点で「場を整えてからメガカイロスとウルガモスのパワーで押し切る」というコンセプトが完成。

あとはカイロスを通せない時の裏エースとしてハッサム。そしてカイロスとウルガモスが止められがちなスカーフガブリアスなどに対して引き先となるフォレトスを採用した。

【個体紹介】

メガカイロス

f:id:pocketyell292:20260516223715j:image

すばやさ:メガシンカ後に最速ガブリアス抜き。

余りをHに振ってできるだけ固く。

持ち物:カイロスナイト

あばれるの火力はもはや説明不要だと思う。ステロなんて踏ませなくても無振りリザードンが一撃で消し飛ぶ。この技を通すことが強力な勝ち筋となる。

やまあらしの採用によって飛行技を持たないアーマーガアの突破が可能になるほか、ウルガモスが撃ち漏らしたブリジュラスを倒して自信過剰を発動させる動きが可能。たまにいるコットンガードミミロップなどにも刺さるので、個人的にはかなり扱いやすかった。

やまあらしは所詮不一致の威力90技でしかないため、やまあらしの火力を十分出せるようにビルドアップではなくつるぎのまいを採用。

エースとして申し分ない活躍をしてくれたが、結局最後の最後でスカーフイダイトウに処理されてしまうことも多かった。これはえーるが10年以上も虫統一をやっていながらほとんどねばねばネットを使ったことがなく、撃つタイミングをよく分かっていなかったせいである。詳しくはオニシズクモの項で。

 

メガハッサム

f:id:pocketyell292:20260516223722j:image

HAぶっぱ

持ち物:ハッサムナイト

カイロスをやまあらし型にした影響でギルガルドに勝てなくなり、もう一体のメガ枠としてギルガルドに強い裏エースが必要になった。(ギルガルドが物理メインになったせいで、ウルガモスのみにギルガルドの相手を任せるのは荷が重い。)

一時はメガヘラクロスを据えていたが、長年フェローチェやチヲハウハネを使い慣れた自分には「初速が遅く、高火力の先制技も持たない格闘枠」というものが使いこなせず、結局先制技を持つハッサムを採用した。

メガ無し状態では耐久が乏しいため受け出しができず、とんぼがえりを利用したサイクル戦には向かない。よってクッションとしての役割をボルチェンフォレトスに任せ、むしくいを使った対面寄りの構成にした。

はたきおとすはメガシンカポケモンや、同じくギルガルド意識の持ち物無しラウドボーンに火力が出ないため、ダメおしを採用した。

当初はほとんど対ギルガルドのみでの採用だったが、HP満タンで温存しておけばねばねばネットを撒かずともイダイトウやメガスターミーといった高火力水アタッカーを返り討ちにできるため、終盤になるにつれて選出機会が増えていった。

 

オニシズクモ

f:id:pocketyell292:20260516223737j:image

すばやさ:無振りカバルドン抜き

余りHC

持ち物:しんぴのしずく

ラウドボーンに対するクッション役。

元々は初手カバルドンを瞬殺してねばねばネットを撒き散らす神の先発要員だったのだが、今作では中盤以降初手ブリジュラスが激増して先発要員として出しづらくなり、最終的にはラウドボーン入りくらいにしか選出しなくなってしまった。

結果として「ねばねばネットを撒いてからのカイロスによる全抜き」という当初のコンセプトが崩壊し、カイロスを通せず負けることが大幅に増えた。

自分の配信を見返しても、中盤あたりからほとんど選出していないし、選出してもねばねばネットを使っていない。正直、このポケモンを上手く扱いきれなかったことが2300に行けなかった原因だと感じている。

構成も変えるのが怖くてずっとこのまま使っていたが、ワンパン必須のカバルドンとの対面が減ったなら、もっと耐久に振るべきだった。

 

バサギリ

f:id:pocketyell292:20260516223745j:image

ASぶっぱ

持ち物:こだわりスカーフ

先発要員。

スカーフにすることでリザードンはもちろんとして、メガゲンガーやメガスターミーなど、厄介なメガ枠を上から処理できるのが強み。

ステロさえ撒いておけばカイロスがワンパンできる範囲が大幅に広がることや、ヒスイウインディやエンニュートなどのたまに来る炎タイプにもしっかり強いことなどから最後までパーティを支えてくれた。

終盤では(おそらく)スカーフを持ったヒスイダイケンキが増えていたのだが、奇跡的に上を取られたことは一度もなく、いずれもワンパンで処理してくれたので本当に心強かった。

 

ウルガモス

f:id:pocketyell292:20260516223751j:image

CSぶっぱ

持ち物:きあいのタスキ

抜きエース兼先発要員。中盤以降はほとんど初手に出していた。

元々は耐久に振ってオボンのみを持っていたのだが、結局ステロを撒かれるため、過去の経験から「撒かれる前に出してしまえばいい。」と考えてウルガモスを先発要員にすることを思いついた。

それに加えてメインの先発要員だったバサギリとオニシズクモがブリジュラスを苦手としており、そのブリジュラスに強く、尚且つメガ枠も消費しないウルガモスに魅力を感じたことからも、襷を持たせた先発向きの構成に変更した。

蝶舞むしのしらせさざめきの火力は非常に高く、蝶舞1回で半減でも無振りメガリザードンXに7割以上入る。この火力で初手にステロを撒きにきたブリジュラスを倒しつつ、後ろのポケモンにも削りを入れるのが理想。メガマフォクシーに殴り勝てるのも魅力。

圧倒的な種族値の暴力で強引に結果を出してくれたし、えーるもそれで信頼を置いていたが、このウルガモスを初手に出すことが増えたせいでねばねばネットを撒けず、当初のコンセプトが崩壊してしまったことを考えると実は失敗だったのかもしれない。

 

フォレトス

f:id:pocketyell292:20260516223817j:image

HBぶっぱ

持ち物:食べ残し

メガカイロスを使う上で注意したいのがスカーフガブリアス。あっさりと上から岩技で止められてしまう。そこでフォレトスを投入した。

岩技を撃ちにきたガブリアスを起点にして要塞化し、鉄壁ボディプレスで相手の物理を蹴散らす。リザードン入りなどに対しては従来のように交代読みボルトチェンジによる対面操作も可能。

イダイトウに有効打が無いのがネックでしっぺがえしやギガドレインを採用した時期もあったが、結局ソウブレイズの増加などでステルスロックを撒きたい場面が多かったので最終的にこの構成になった。(5月25日追記:画像ミスってました。カウンターの枠、最終日はステルスロックに変えていました。他にも身代わりにすればドラゴンテールを回避できたりもするので、この枠は要検討かも。)

メガエアームドに殴り勝てる貴重な虫ポケモンでもある。

こちらもなまじ結果が出せてしまったせいで正解だと思い込んでいたが、そもそもメガカイロスをきちんと通すことができればフォレトスに無茶をさせる必要もないわけで、やはりコンセプトが迷子になっていた感は否めない。

 

【選出パターン】

 

初手バサギリ カイロス ウルガモス

初手オニシズクモ カイロス ウルガモス

基本の選出。相手に応じてステロやねばねばネットを撒きつつ、カイロスとウルガモスの圧倒的な火力の暴力で押し切る。

 

初手バサギリ ハッサム オニシズクモ

ギルガルド入りに対して多用した選出。終盤はメガスターミー入りに対してもこれで戦っていた。バサギリとオニシズクモで炎を牽制しつつ、最終的にはメガハッサムによる全抜きを目指す。

ギルガルドはしっかり出てくるし、しっかりハッサムが勝てるのだが、結局その後ガルーラやガブリアスをギリギリ落としきれずに丸焼きにされてしまうことも多かった。

 

初手ウルガモス フォレトス カイロス

後半に多用していた選出。いろんな意味で問題の選出。雨パ以外のブリジュラス入りにはほぼこれだった。ステロを撒きにきたブリジュラスをウルガモスで牽制しつつ、フォレトスをクッションにサイクルを回し、カイロスで全抜きを狙う。

カイロスが呼ぶスカーフガブリアスを起点にできるのは強く、元々フォレトスをクッションとした構成は長く愛用していたので個人的にすごくしっくりきていたのだが、冷静に考えるとこの時点でコンセプトが迷子である。

これを過信して当初のコンセプトからかけ離れていったのが2300まで到達できなかった理由であると考えている。

 

【まとめ】

ポケモンは強かったし、パーティも決して間違ってはいませんでした。レート2200超えという結果にも満足しています。

しかし、ねばねばネットを使いこなせなかったこと、それによってパーティのコンセプトがブレてしまったことは反省点です。

自分の得意な脳筋バカ火力攻めサイクル構築にしてみようかとも考えましたが、愛用のこだわりメガネとハチマキが無い状態では得意の高火力サイクルを実現することはできません。

やはり、現状では「場を整えてメガカイロスを通すこと」が1番明確で分かりやすい勝ち筋になるのではないかと思います。

今後も虫統一を続けて研究を重ねていくので、たまに見ていただけると嬉しいです。

 

【ポケモン小説】とうちゅうかそう

ただ、友達を助けたかっただけなんだ。

図鑑を見て知った。パラスはパラセクトになると、キノコに身体を乗っ取られてしまうんだって。そうなったら、パラスは死んでしまうんだって。それを知って、日々大きくなっていくキノコがすごく怖くなった。

このままじゃ、僕の大事な友達が死んでしまう。だから助けたかっただけなんだ。進化する前なら間に合うかもしれない。助けられるかもしれない。そう思って、焦って、僕はパラスのキノコを無理矢理引き離してしまった。パラスはそれから、一切動かない。

パラスの時点でキノコの菌糸は脳にまで影響しているって、後で知った。パラスのキノコを無理矢理引き離すのはすごく危険なことなんだ。

ああ、なんて馬鹿なことをしてしまったんだろう。なんでもっとちゃんと調べなかったんだろう。なんで大人に相談しなかったんだろう。僕のせいで、パラスは動かなくなった。僕のせいで。

家族やポケモンセンターのドクターは僕のせいじゃないって慰めてくれたけど、何も耳に入らなかった。あれからずっと、暗い暗い毎日が続いてる。

 

今日も、いつものようにパラスの様子を見に行った。2ヶ月くらいはポケモンセンターで様子を見てもらったけど、今は家にいる。

パラスは相変わらず動かない。大好物だったモモンのみも食べない。

「よく一緒につまみ食いして叱られたよね。」

答えは返ってこない。でも、僕は必ずパラスに話しかける。

そして、身体を拭いてあげようと思って背中に触ったら、少し違和感を覚えた。あれ?ここ、こんなに膨らんでたっけ?ちょうどパラスのキノコが生えていた部分だ。そこが少し盛り上がっている。

僕は急いで母さんを呼んで、パラスをポケモンセンターに連れて行った。そして分かったのは、キノコがまた生え始めていることと、そのキノコの菌糸がパラスの身体を治している最中だってこと。

ドクターが言うには、このまま順調にキノコが育てば、パラスがまた動けるようになるかもしれないらしい。

 

パラスが治るかもしれない。

 

それから僕は夢中で、パラスの……というより、キノコの世話をした。キノコが好きなジメジメしたところを用意して、湿気も絶やさないように毎日霧吹きした。日光も当たりすぎないように気をつかう。

せっかく毎日綺麗にしていたパラスの身体はどんどんカビや菌糸まみれになってしまったけれど、無理に取り除いちゃいけないらしい。二度と同じ失敗をしたくなかったから、ポケモンドクターの言うことをちゃんと聞いて、自分でもたくさん調べながら世話をした。

あのキノコは、とうちゅうかそうって言うんだって。パラスには、生まれつきキノコの胞子がついてるんだって。キノコはパラスの身体から栄養を吸い取るけど、あのキノコから作られた薬で命が助かった人やポケモンもたくさんいるらしい。怖いけど、すごいんだなぁ、このキノコ。

僕はいつのまにかキノコに詳しくなっていた。あれほど怖かったキノコを一生懸命世話してる。不思議な感覚だ。そして少しずつ、少しずつ、パラスのキノコはまた大きくなっていった。

 

そして、数ヶ月が過ぎた頃、ずっと動かなかったパラスがまた動き出した。

 

奇跡だ。

 

パラスが僕を見つめてる。まだ1年も経ってないけれど、ずいぶん懐かしく感じるその瞳。進化したら消えてしまう、その黒い瞳

 

僕は当然胸が高鳴った。けれど、同時に不安でもあった。今のキミは、パラスなの?それとも、キノコなの?

「パラス、僕のこと分かる……?」

恐る恐る尋ねてみると、パラスは以前のように、元気よく僕に飛びついてきた。ああ、この鋭い脚が肌に食い込む感覚、微かに感じるきのこの匂い、パラスだ。僕の友達のパラスだ!

「パラス!……パラス!ごめんよパラス!ごめんよ!無理矢理キノコ取ってごめん!ひどいことしてごめん!」

泣きながら謝る僕を、パラスはきょとんとして見つめていた。パラスなのか、キノコなのか、もうどっちでもいい。どっちも揃ってパラスなんだ。僕の友達のパラスなんだ。僕とずっと一緒に過ごした、パラスなんだ!

 

パラスがまた動き出した後、ドクターは僕に「かわらずのいし」っていう石をくれた。ポケモンの進化を止める不思議な石らしい。こういう石があるって知ってれば、最初からこんなことは起こさなかったかもしれない。大人に何も相談せずに焦りだけでやってしまった自分がどれだけ馬鹿だったのか、改めて思い知らされる。

パラスは生まれた時からキノコと一緒に生きている。パラスとキノコのつながりは、きっと僕らが考えてるよりずっと深い。そのつながりは、僕らが勝手に怖いものと決めつけたり、ましてや勝手に切り離していいものじゃなかったんだと思う。

たくさんお世話になったドクターに深々と頭を下げて、僕とパラスはいつもの日々に帰った。

 

あれから、数年。僕は正式にポケモントレーナーになって、パラセクトと一緒に冒険してる。ドクターからもらったかわらずのいしは、結局使わなかった。パラセクトはもう、大好物のモモンのみは食べない。昔みたいに抱きついてもくれない。あの黒い瞳も消えた。

だけど時々、寝てる時に寄り添ってくるし、こっそり甘えてくる。パラセクトと、キノコ。どっちも揃ってパラセクト。今はもう、むしのパラセクトの意識は無いのかもしれないけれど、僕は二度とパラセクト達のつながりを恐れない。

 

「よし、次の街に行こう、パラセクト!」

 

「………パラセッ!!」

 

たっぷり湿気を与えてから、僕たちは新しい冒険に旅立った。

【ポケモン小説】三ツ首龍のやつあたり

俺は、伝説を殺し損ねた。

あの時、俺はあるじの命令を受けて、炎を操る白い龍と戦った。あるじが言うには、奴は名高い伝説の龍らしい。奴を屠るのが俺の役目だった。

伝説の龍?馬鹿馬鹿しい。所詮は俺と同じポケモンだろうが。奴は俺より遅く、俺より力も弱かった。勝てる、そう確信した。

まずは取り巻きの雑魚どもを処理する。だいもんじなみのりきあいだま……。あらゆる技を駆使して雑魚を蹴散らし、あの白龍にも得意のりゅうのはどうで致命傷を与えた。奴も龍ならさぞかし効くだろう。もう1発当てれば終わりだ!

だが、ドドメを刺そうとしたあの瞬間、何か大きな力に押し返されたような、そんな感覚に襲われた。気がついたら、俺は撃ち落とされていた。俺は負けたんだ。

俺が負けたせいで、あるじの計画は失敗したらしい。あるじの計画がどんなものかは、俺も知らない。ただ、あるじの怒りは言葉にできないほど強かった。

あるじは俺を痛めつけた。肉が裂けた。血が流れた。他には何をされたか、もう思い出せない。思い出したくもない。ただ、薄れゆく意識の中で聞こえたあるじの声は覚えている。「ゴミ」、「クズ」、「木偶の坊」、「役立たずの化け物」……。俺は、目の前がまっくらになった。

 

それからも、あるじはことあるごとに俺を傷つけた。いつの頃からか、あるじは変な形の杖を持ち歩くようになった。あの杖から出るおかしな電波に当てられると、全身の力が抜ける。そうして無抵抗になって、また殴られる。

傷が増えるたび、身体の自由が効かなくなっていく。もう飛ぶこともままならない。何だ?炎が出せねえ。殴られるたび、記憶が薄れていく。りゅうのはどう?俺の技?どうやってたっけ……。

次第に弱っていく俺を見かねたあるじは、俺に美しい宝玉をくれた。その宝玉を持つと力がみなぎった。あのあるじが俺に優しくするなんて。こんな奇跡があるのか。あの時ばかりは嬉しかった。

その宝玉が、力を与える代償に俺の命を削り続ける代物だと気づくまでに、時間はかからなかった。くそう。これ、手放したいのに離れない。痛い。痛い。痛い。苦しい……。

 

やがて、俺にもう一度チャンスが訪れた。2年ぶりの実戦だった。バカでかい洞窟で、子どもと対峙した。その子どもの目に、俺は見覚えがあった。

……アイツだ。見た目は少し違うが、あの時、あの白い龍を従えていた子ども!アイツと同じ目をしている!

これが名誉挽回の最後のチャンスだと、俺は確信した。俺は全力で、そいつとそいつのポケモン達を殺しにかかった。

結果はボロ負けだった。当たり前だ。2年間のブランク、戦う前からズタボロの身体、本来の技も出せねえ。極めつけにはこの命を削る宝玉……。ああ、痛い!痛い!苦しいなあ!ちくしょう!こんなもんに頼って技を出しても2年前の自分にすら及ばない。呪いの装備だ。勝てるわけがない。結局、あるじの計画はまた失敗したらしい。

 

無様に負けた俺は、あるじによってボールから出された。俺は心の底から怯えていた。また同じ目に遭わされる。いや、今度はもっと酷い目に遭わされるかもしれない。あるじの怒りはどれほどだろうか。想像もつかない。恐ろしい。

……だが、いつまで経ってもあるじは動かなかった。いや、動いてはいるが、生気が感じられない。うわ言のようにブツブツと何かを言っている。よく見ると、あるじはあの変な杖を持っていない。今なら、おかしな電波は飛ばしてこない。殴られることもない。反撃されない。やらなきゃ、やられる。……今なら、やれる。

それに気づいた時、俺の中に蓄積していたドス黒い感情が噴き出した。

次の瞬間、俺はあるじの肉を裂き、噛みちぎった。ほとんど考える間もなく、衝動的な行動だった。あるじは一瞬遅れて低い呻き声を上げ、傷口を押さえた。あるじが何か言っている。聞こえない。俺は止まらない。止まるなんてできない。そもそもこんなことになったのは誰のせいだ?俺は二度も全力で戦った。負けたのは俺だけのせいじゃないはずだ。あるじだって悪いのに、あるじだって負けたのに、何で俺だけが痛めつけられる?絶対におかしい!憎い!この男が憎い!

今しかない。この男の命を奪うなら今しかない。もう技を出す余裕もない。傷口を押さえながら悶えていたあるじを押し倒し、首筋を喰い千切ろうとしたその刹那、衝撃と共に意識が飛んだ。気を失う直前、最後に見たのは黒服の3人組。ああ、そうか、まだコイツらがいた。くそう。邪魔しやがって。俺はコイツらが嫌いだ……。

 

その後、あるじは辛うじて一命を取り留めたようだ。ちくしょう。死ねば良かったのに。そして俺は「暴走」したものとして、「処分」されることになった。あるじは迷わず俺の五体をバラバラに引き裂いて生ゴミのように捨てるだろう。生まれた時から道具扱いで、散々こき使われた結果がこれか。ああ、悔しいなぁ。悔しいなぁ。

自分の死を確信した瞬間、あの2人の子どもと戦った時の記憶がフラッシュバックした。あのガキどものポケモン達は、戦ってる時もすごく幸せそうだった。幸せ?俺は一度だって感じたことがない。あんなふうになれたら、どんなによかったか。羨ましいなぁ。

そんなことを考えていたら、すぐに時間が来てしまった。俺はこれから、あるじに殺される。そう思っていた。

しかし、俺の処遇を決めたのはあの黒服たちだった。黒服たちは「処分」と言いながら俺のモンスターボールを破壊した。あの宝玉も取り外した。そして、俺はもう用済みだからどこへでも行けとぬかした。

俺は呆気に取られた。コイツら、何をしている?こんなことをあるじが命令するはずがない。あるじに逆らったらどうなるか、コイツらだって知っているはずだ。いつまでも去らない俺を見て、黒服の1人がやっと重い口を開いた。

 

「あの方は……もう、何もできん。」

 

何もできない?どういうことだ。死んだわけじゃないはずだ。あるじは生きていた。じゃあなぜ?

 

「……有無は言わせん。去れ。」

 

俺はしばらく呆然として、

 

夜空に向かって飛び立った。

 

夜の空を滑空する。下には人間たちの棲家が鮮やかに煌めいている。上を見上げれば満天の星空。なんだ。夜ってのはこんなに綺麗なのか。もっと早く知りたかったぞ。

あるじから……いや、あの男から自由になれた。もう俺を縛るものはない。初めての感覚に少なからず心が躍る。

だが、行く当てがない。生まれた時からあの男の道具だったんだ。野生の生き方も知らない。知っているのは、敵を徹底的に痛めつける術だけ。そんな俺に居場所があるのだろうか。

崖の上に降り立ち、人間たちの棲家を眺める。人間だけじゃない。あの光の中にはたくさんのポケモンも共に暮らしている。羨ましい。俺は孤独だ。

その時、素っ頓狂な声が後ろから響いた。

「オイオイ、野生のサザンドラかい。こりゃ珍しいモンを見ちまったねぃ。」

咄嗟に後ろを振り向くと、白髪の人間の子どもがいた。

「こりゃまた随分ボロボロだねぇ。歴戦の猛者ってやつかい?」

なんだこのガキ。気配が掴めない。ふざけているようで、妙な威圧感を覚える。殺気は感じないが、確かに強者のオーラを帯びていた。

「本土になんか戻りたくもなかったけど、こんな珍しいモン見れるなら、まあ帰ってきた甲斐ってやつはあったかな……。」

1人でブツブツ言ってやがる。なんだこのガキ。

「おまえさん、オイラのポケモンにならねえか?ちょうど新メンバーを探してたんだ。新しいチャンピオンとの再戦に備えてねぇ。」

……マジでなんだこのガキ。勝手に1人で進めるな。図々しいにも程がある。1発ぶちのめしてやりたい。

俺は臨戦態勢に入っていた。

「おっ、やる気だね〜。じゃあ、始めようか。」

そう言ってガキは、見たこともないポケモンを繰り出した。鋼鉄の身体を持つ……龍?なんだこのポケモン

「おっと、気ぃつけろよブリジュラス。そいつはオイラがゲットするんだから。」

そうか。コイツはブリジュラスというのか。初めて見るポケモン、強者のオーラを持つ相手、なぜだかワクワクする。遺伝子に刻まれた何かが、俺にこの戦いを楽しめと囁いている……!そうだ。こんなムカつくガキ、ひねりつぶしてやる!

 

己の高揚感に身を任せて、俺は全力のやつあたりをぶちかました。

 

あれから、数年。今はもう、俺のやつあたりはオニスズメの涙ほどの威力も出ない。

【構築記事】レギュIマスボ級到達虫統一

どーも、えるむしです。

皆さん、ポケモンSVのランクバトルは遊んでおりますでしょうか。今はレギュI。伝説2体ルールです。

僕はこのルールにおいて、虫統一でマスボ級に行き、堂々と勝ち越すことを目標にしてきました。

結局、目標は達成できませんでしたが、自分の足跡を残すためにも構築記事を書くことにしました。そのパーティがこちら。

f:id:pocketyell292:20250702010303j:image

全員タイプ一致テラスの虫統一です。

「虫統一の時点でイカれてるのになんでテラスタルにまで縛り加えてんだよ。バカじゃないか。」と思われてしまうかもしれませんが、まずは僕の話を聞いてください。

ちなみに最終戦績はこれです。

f:id:pocketyell292:20250702010301j:image

僕はもっと強くなる。

 

【構築経緯】

むしタイプの強みは何といってもピーキーな一点特化性能です。「攻撃力だけは伝説級だけど他はクソザコレベル」、「特防は完璧だけど他はボロカス」、そんなピーキーすぎる連中の集まりがむしタイプなのです。ならばその一点の長所を極限まで高めてやるのがトレーナーの務めだと考えました。

加えて、剣盾時代の経験から、伝説のポケモンにはタイプ一致技による等倍ゴリ押しが有効であると考えていました。伝説ポケモンを不一致技の半端な火力で殴っても、弱点保険の起動を手伝うだけですからね。

これらの理由から、圧倒的な数値をもってであいがしらやオーバーヒートなどの強力なタイプ一致技を放てる鉢巻チヲハウハネと眼鏡ウルガモスを主軸にパーティを組み始めたのです。

 

【メンバー紹介】

・チヲハウハネ

f:id:pocketyell292:20250702004858j:image

せいかく いじっぱり

きそポイントH244 A252 B4 D4 S4

攻撃の鬼。このパーティの圧倒的エース。

テラス鉢巻であいがしらでミライドンやカイオーガが消し飛びます。基本的には初手で出して相手をワンパンし、数的有利を取ることを目指します。当然、であいがしらの火力を限界以上に引き出せる虫テラスを採用。

ウルガモス

f:id:pocketyell292:20250702004925j:image

せいかく おくびょう

きそポイントH4 B116 C132 D4 S252

特攻の鬼。

テラス眼鏡オーバーヒートでコライドンやグラードンが消し炭になります。とはいえ、実際は伝説の相手よりもブリジュラスやランドロスなど、他のポケモンが処理できないポケモンを数値の暴力でねじ伏せる役目が中心です。もちろんオーバーヒートの火力を極限まで高める炎テラスを採用。

ハッサム

f:id:pocketyell292:20250702004956j:image

せいかく いじっぱり

きそポイントH252 A28 B204 D20 S4

このパーティ唯一のバランスファイターにして、パーティの潤滑油。エースの二体が一度攻撃したあとはほぼ置物と化すため、その時に優秀な引き先として機能するのがこの男。こいつをクッションとしてサイクルを回すことでエース二体の大技を繰り返し撃つことができます。つるぎのまいのおかげで自身が全抜きを狙うことも可能。その時の火力補強のために鋼テラスを採用。

・モスノウ

f:id:pocketyell292:20250702005001j:image

せいかく ひかえめ

きそポイントH252 C4 D252

特防の鬼。カイオーガのフルパワーしおふきすら余裕で耐えるほどの耐久を持ちます。ハッサムが引き先として機能しないミライオーガ、ミライ黒馬などの構築にはこちらをクッションとして出します。コライ黒馬に出した時などはコライドンへの交代に合わせて高火力の氷技を撃ちたい場面が多かったため、氷テラスタルを採用。

ここまでのエースアタッカー二体、クッション二体でパーティの基本部分は完成。ここから補完枠を入れていきました。

・バサギリ

f:id:pocketyell292:20250702005015j:image

せいかく ようき

きそポイント A252 B4 S252

攻撃の鬼2号。

ホウオウとレックウザを処理するために絶対に必要な枠。こいつらを倒す……というより、こいつらにテラスタルを強要するのが役目です。S85では遅すぎて話にならないのでスカーフで採用。それでもスカーフコライドンや黒バドには上から瞬殺されて終わる他、ウーラオスにも何もできないため、あまり出したいポケモンではありません。でもいないと困るのも事実。レックウザ対面などで相手にテラスタルを切られても火力でゴリ押しできるよう、岩テラスタルで採用。

メガヤンマ

f:id:pocketyell292:20250702005022j:image

せいかく ひかえめ

きそポイント B4 C252 S252

スピードバカ。コライドンにテラスタルを強要しつつ、黒バドやディンルーなど周りのポケモンにもある程度対抗できる駒として採用。一致技の火力の低さがバトレボ時代から続く課題のため、それを補うべく飛行テラスで採用。

 

【選出パターン】

・チヲハウハネ ハッサム ウルガモス

この3体を基本の選出とする。困ったらこれ。ハネとガモスの超火力で相手をワンパン→ハッサムに引いてとんぼがえり→もう一度超火力技を放つ。これを繰り返し、数値の暴力によるゴリ押しで勝つのが理想。

しかし、当然理想通りに上手くいくことは少ない。ハッサムは所詮低種族値でしかないため、受け出しができるのは多くて2、3回。

限られたサイクル回数で削り切るために、ハッサムの耐久を過信せず、ハネとガモスの火力の方を過信して強気に相手のHPを削り取る姿勢が大切。

・チヲハウハネ ハッサム(orウルガモス) モスノウ

主にミライドンカイオーガなど、相手の伝説枠2体が特殊型だった時の選出。クッション枠がモスノウになるだけで運用は基本選出と変わらないが、モスノウの対特殊におけるクッション性能はハッサムのそれ以上であるため、この選出ができた試合はかなりスムーズに勝てるケースが多い。

・チヲハウハネ ハッサム メガヤンマ

主にコライバド構築などに選出。ハネ、ハッサムの基本サイクルはそのままに、コライドンと黒バド両方に対抗できる駒としてメガヤンマを加える。コライドンメガヤンマ対面でテラスタルを切られたとしても、エアスラッシュの削りがあればチヲハウハネのであいがしらで倒せる場合が多い。この選出をする場合、相手がテラスを切るまでは常にメガヤンマと相手伝説枠の対面を維持することがポイント。

・バサギリ ウルガモス(orモスノウ)  チヲハウハネ

ホウオウ入りに対する選出。バサギリの圧力を活かしてホウオウを引かせつつ、裏を削って受け出しができなくなったところでホウオウを仕留める。結局ホウオウのせいなるほのおを一度は受けなければいけない試合が多く、お祈りプレイになりがちでまだまだ安定はしない。

 

ちなみに連撃ウーラオスが出てきたら誰も勝てません。連撃ウーラオスを出された時点でほぼ負けです。こればっかりは連撃ウーラオスに確実に勝てる虫ポケモンポケモンSVに存在しないので仕方ない。異論は認めません。

 

【おわりに】

結局、目標は達成できなかったものの、少なくとも伝説二体ルールで前期と合わせて約500勝しているパーティです。ウーラオスに絶対勝てない点にさえ目を瞑れば、決して壊滅的に弱いパーティではないと自負しています。ふんだんに盛り込んだタイプ一致技とタイプ一致テラスタル……。タイプ一致補正というシステムを強く信頼する僕にとって、このパーティはまさに理想の具現化です。今後も改良を重ねて、更に強くしていきたいと思います。

【ポケモン小説】抜け殻が動くわけがない

そいつはあの日、突然現れた。

大切な相棒が進化したあの日。記念すべき日になるはずだった、あの日。一度も使った覚えのない、新品のモンスターボールの中からそいつは出てきた。

相棒の面影を宿したその姿。でもそいつは相棒ではない。俺の相棒、テッカニンは確かにここにいる。じゃあこいつは一体……?

そんなことを考えたら気味が悪くなって、まるで呪物か何かのようにそいつをボールに押し込んだ。

そのあと、図鑑を必死に漁って見た。どうやらアイツの名前は「ヌケニン」とかいうらしい。図鑑にはいろんなことが書いてある。ハネを全く動かさずに飛ぶことができるとか、背中の穴を覗くと魂を吸われるとか……。いや怖っ。

でも違う。俺が知りたいのはそんなことじゃない。アイツが一体何者なのかだ。テッカニンはここにいるんだ。あいつがテッカニンであるはずはない。じゃあ、あいつは一体何だっていうんだ。

俺はハッキリ言っていい加減な男だ。普段図鑑なんて見ないし、ポケモンの細かいことなんていちいち調べない。でもあの時だけは必死で調べた。不安を取り除きたくて。あいつの正体を確かめたくて。

効果抜群の技しか効かない?違う。そんなことはどうでもいい。抜け殻が魂を宿した?だからその魂ってなんなんだよ?

生息地不明?ガラル地方の特異地帯を除き、野生個体の目撃例は一切ナシ?……なんだよ、ソレ。まるで本物の幽霊じゃねえか。

結局、どんなにポケモン図鑑を調べても、なんたら博士とやらの講義を見ても、ネットを漁っても、1番肝心な情報がヌケていた。

「お前、一体誰なんだよ……。」

そうして悩んで、悩んで、悩んだ末に、俺は……。

 

アイツを忘れることにしてしまった。

 

元より俺はいい加減なんだ。こんなことは忘れてしまう方がいい。

アイツがポケモンであることだけは間違いないはずだ。だったらずっとボールに入れておけばいい。このままずっとしまっておこう。

一瞬、捨ててしまおうかとも考えたが、捨てたら捨てたで恨みを買いそうで怖い。それに、何より大事な相棒の片割れみたいなもんだと思うし。迷ったけど、やっぱり捨てることはできない。

世の中、パソコンのボックスにポケモンをずっと閉じ込めるやつだっているんだ。俺だけがやってることじゃないし、捨てるわけでもない。別に恨みを買うことはないだろう。大丈夫だ。大丈夫。

そう自分に言い聞かせながら、俺はヌケニン入りのモンスターボールを引き出しの奥にしまい込んだ。そして、恐る恐る相棒に聞いてみる。

「なあテッカニン。アイツ、お前の兄弟……ってか、分身みたいなもんなのか?」

「ニーン?」

テッカニンは無邪気に飛んでいる。俺があいつを閉じ込めたことはなんとも思ってないようだ。もしかして、テッカニンですらアイツが誰なのか分かってないんじゃ……。

「なあテッカニン、アイツ、一体なんなんだ?」

「ニン?」

「お前の仲間なのか?」

「ニーン?」

何のことか分からないとでも言うように、テッカニンはきょとんとして首を傾げた。ツチニンの頃からの癖だ。進化しても変わらないその仕草を見て、ようやく心が安らいだ。

「ぷぷっ。なんだ、お前も知らねえのかよ。」

なんだか馬鹿馬鹿しくなって、笑みがこぼれる。そうだ。俺にはテッカニンがいるんだ。アイツのことは気にしなくていい。

そうして俺は、テッカニンと一緒にいつもと変わらない日常を過ごし始めた。不安も、不思議も、恐怖も全部、ポケットの奥底に押し込んで。

大丈夫。テッカニンはここにいる。

 

…………………

 

俺とテッカニンの別れの時は、そう遠くないうちに来てしまった。

むしポケモンは寿命が短いって、知ってたはずなのに。大の大人がガキみてえに大泣きした。

だが幸い、近くの街に住むなんとか老人っていうじいさんがテッカニンを丁重に葬ってくれた。

 

「テッカニン。立派なお墓作ってもらえて良かったなぁ。俺のばあちゃんの墓よりすげえぞ。」

 

この地方に越して来てからそこそこ経つけど、こんなに優しいじいさんがいるとは知らなかった。じいさんに深々と頭を下げて、夕焼けを眺めながら俺は家に戻った。

いつもならテッカニンが亜音速で突撃してくる。でももう、テッカニンはいない。寂しさと、なんとも言えぬ虚無感に襲われる。これ以上起きてたらまた泣いてしまいそうだ。もう今日はさっさと寝てしまおう。

俺は風呂にも入らず、吸い込まれるようにベッドに倒れ込んだ。

 

……

 

どのくらい経ったのだろうか。外はもう暗くなっている。中途半端な時間で目が覚めてしまった。今から風呂に入るのもしんどい。もう一度眠りにつこうとした、その時だった。

「え」

引き出しが、開いている。

机の引き出しが、開いている。

いい加減な俺でも、その引き出しには心当たりがあった。ベッドから飛び起きて、引き出しの中を確かめる。

いない。

アイツがいない!

その瞬間、今まで押し込めていた不安と恐怖が一気に溢れ出した。

勝手にボールから出てきたのか?!どこだ。どこに行った?!今までこんなことは一度もなかった。なんで今、このタイミングで?!

恐怖と焦燥感で思考が追いつかない。ともかく俺はアイツを探そうとした。そして咄嗟に振り返った瞬間、

「うわああああああ!!!!」

俺は情けない叫び声をあげて尻餅をついた。

傀儡のように無機質に浮かぶ影。生気が感じられない朽ちかけの身体。頭上には淡い光を放つ三日月の輪。

ヌケニンがそこにいた。

いやダメだ。恐れるな。コイツはテッカニンの、俺の相棒だったテッカニンの分身みたいなもんだ。……そうだよな?

必死で冷静を装いながら、テッカニンにしていたように話しかけてみる。

「よ、よう。な、なんだよ。ヌケニン。脅かすなよぉ。」

「……」

「え、ええと、久しぶりだな?」

「……」

ヌケニンは何も答えない。

「な、なあ、何か言ってくれよ。」

「……」

ヌケニンがゆっくりと、ゆっくりと俺に近づいてきた。

「お、おい、待てよ。怖いぞ。なあヌケニン。」

「……」

返事はない。

「お前、もしかして俺に閉じ込められたことを恨んで……。」

「……」

返事はない。ただゆっくりと迫ってくる。

「お、おい!何とか言えよ!言えって!」

「……」

ゆっくりと、ゆっくりと近づいてくる。こわい。足が動かない。

「お前、ひょっとしてテッカニンの……。」

一瞬、願望にも近い考えが頭をよぎる。しかし。

「……」

「……」

「……」

ヌケニンは答えない。笑わない。声も出さない。首も傾げない。

ああ、やっぱり、やっぱり、お前は違う!テッカニンじゃない!

「うわあああああああああああああああああああああ!!!!」

怖くて、恐ろしくて、俺の中の何かが壊れた。

「やめろ!それ以上近寄るな!お前はテッカニンじゃない!!」

「……」

「何なんだよお前!おかしいんだよ!」

「……」

尚も応えることなくただ近寄ってくるソレに、俺はいよいよ恐怖に苛立ちが入り混じって、そして、

……そして、俺は言ってしまった。

「大体、ぬけがらが飛んだり動いたりするわけないだろ!!!!!!!!!!!!」

「……!」

それは、絶対に言ってはいけない言葉だった。

おれは、めのまえがまっくらになった。

 

………………

 

真夜中。

散らかった一人暮らしの男の部屋。

涙を流しながら呆然とする男。

男の目の前には、朽ち果てた空蝉が一つ。

男は次第に冷静さを取り戻す。

なぜ自分は泣いているのか?ああ、そうだ。大事に飼っていた蝉が死んだのだ。

だが、その空蝉……抜け殻が目の前に落ちている理由を、男は二度と思い出せなかった。

抜け殻が勝手に動くわけがないのだから。

 

【ピクミン4】敵全員が音楽隊!?ピクミン4のBGMに隠された秘密とは。

ぽ久しぶりです。えーるです。

f:id:pocketyell292:20230906173434p:image

皆さま、ピクミン4はもう遊びましたか?!

ぼくは初代の頃からのピクミンファンで、10年ぶりのナンバリング新作の発売に狂喜乱舞し、この2ヶ月間頭の中が全部ピクミンになるくらいどハマりしていました。

 

そんなピクミン4ですが、何度も遊んでいるうちにBGMに関するとある秘密に気づいたので、今回皆さまに共有したいと思います。

 

この記事が、皆さまがさらにピクミンの世界を楽しむための一助になることを願ってやみません。

 

ピクミンインタラクティブミュージック】

皆さま、ピクミンの魅力といえば何を思い浮かべるでしょうか?

 

可愛らしいキャラクターや残酷な世界観とのギャップなど、魅力を感じる部分は人それぞれいろいろあると思いますし、まだピクミンのこと全然知らないから分かんない!という方もいると思います。

 

そんな中、曲がりなりにもピクミン歴20年のぼくがピクミン最大の魅力だと思っているのは、なんと言ってもインタラクティブミュージック!!

 

インタラクティブミュージックというのは、簡単に言えばプレイヤーの操作や登場人物の行動に合わせて多彩に変化するゲーム音楽のことです。

 

有名なところだと、マリオでヨッシーに乗るとBGMにパーカッションが加わることなどが例として挙げられますね。

f:id:pocketyell292:20230906170713p:image

ポケモンのジムリーダー戦で、最後の1匹になるとBGMが変化することなども、このインタラクティブミュージックの一種であると言えるでしょう。

f:id:pocketyell292:20230906170718j:image

プレイヤーの行動次第で曲に変化を生み出す仕掛けはゲームの楽しさと没入感を高める上で非常に効果的であり、現在では様々なゲームでこのインタラクティブミュージックが取り入れられています。

 

ピクミンシリーズは初代からインタラクティブミュージックを積極的に使用しており、シリーズを通して敵に近づいたり、ピクミンで物を運んだりするとステージBGMが微妙に変化することはファンの間では有名です。

 

また、ピクミン2ピクミン3のボス戦BGMはボスの行動に合わせて曲が8種類以上に変化するという凄い仕掛けになっており、これは非常に高い評価を受けています。

 

そのような背景もあって、ぼくは「ピクミン4ではどんなインタラクティブミュージックが聴けるのだろう。」と期待に胸を躍らせながらピクミンとの冒険に出かけました。

【敵全員が音楽隊?!】

しかしながら、ぼくがピクミン4を始めて最初に思ったことは「BGMが地味!!」でした。


www.youtube.com

【参考】ステージ1ひだまりの庭のBGM

ピクミン4のステージBGMは、音楽というよりも環境音に近く、過去作のステージBGMとはかなり雰囲気が違うものでした。過去作のBGMに慣れた身からすると、ピクミン4のステージBGMはとても地味に聴こえていたのです。

 

そんな中で原生生物コチャッピーを発見。今までのピクミンなら、彼らに近づいて戦いを挑めば通常のステージBGMから敵接近BGMに変化するはずです。さっそく近づいてみましょう。


www.youtube.com

来ました来ました!敵の接近によるBGMの変化!コチャッピーに近づいた途端、ラッパのような音が加わったことが分かるでしょうか。これこそがぼくにとってのピクミン最大の醍醐味!

 

「よかった、ちょっとBGM地味だけど、ちゃんとこの要素はあるんだ!」そう思って探索を続けると、今度はブタドックリを発見!


www.youtube.com

お気づきでしょうか。さっきと少しBGMの変化が違います。ラッパではなく、弦を弾いたような音楽ですね。今までの作品では、敵接近時のBGMはあくまで1ステージにつき1種類だったはずです。「今作は敵接近BGMが2種類あるのかな?」そう思って今度はオタマに近づいてみると……。


www.youtube.com

また違う曲が流れました!!そう!!なんとこのピクミン4というゲーム、1種類や2種類どころではなく、100種類以上いる原生生物ほぼ全員が専用BGMを持っているのです!!

 

(一部共通のBGMを持つ生物もいるので厳密には100種類も無いと思いますが、まあここはインパクト重視で100種類と書かせてください😂)

 

中でもピクミンお馴染みの敵キャラでもあるチャッピーの専用BGMはちょっと凝っていて、寝ている間と起きている間で異なります。チャッピーが寝ている間はいびきのようなフレーズが流れ、起きた途端、獣の鳴き声のようなフレーズに切り替わっていることは分かりますでしょうか。


www.youtube.com

これら原生生物ごとの専用BGMはいずれも少数の楽器で演奏される短めなBGMなので、この記事内では他のBGMとの区別のため、以後「ミニマルBGM」という呼称で統一したいと思います。

 

ちなみに2種類以上の原生生物が同時に現れた場合、ちゃんと全員分のミニマルBGMが同時に流れます。これがまた複数の曲がちゃんと自然に噛み合うように作られていて凄い。

 

これはウジンコのミニマルBGM。ファミコンの電子音のようなピコピコした可愛い音ですね。(この時点で既に壁の向こうにいるチャッピーが寝ている時のミニマルBGMが小さく混じってますね。)


www.youtube.com

ここでとなりにいるチャッピーを起こしてみると……?

 

チャッピー(起きてる状態)とウジンコ、2種類のミニマルBGMが綺麗に混ざりました!


www.youtube.com

このように、ピクミン4ではプレイヤーが原生生物と出会うたびに違う曲が流れ、ステージBGMがどんどん変化していくのです。そう、つまりぼくたちはステージを探索しながら、みんなで音楽を演奏していたのです!ピクミン4はいわば、敵全員が小さな音楽隊であると言えるでしょう!!

 

最初にステージBGMが地味と書きましたが、それもそのはずでした。ピクミン4のステージBGMは、たくさんの原生生物達が演奏する個性豊かな曲が加わることを前提として作られているのです。

 

つまり、デフォルトではベースだけが流れているような状態で、様々な原生生物との出会いによって初めて曲が完成する仕掛けになっているのです。だからこそ、ステージBGM自体は環境音中心の静かなものが多く、どんなミニマルBGMとも組み合わせやすい構成になっているのではないでしょうか。

【ボス戦BGMは?】

ここまではいわゆる雑魚敵とステージBGMの話。それでは、アクションゲームの華とも言える、ボス敵との戦闘BGMはどうなっているのでしょうか。

 

もちろん、ボス敵たちも全員が固有のミニマルBGMを持っています!!しかし、ボス敵たちのミニマルBGM自体は雑魚敵のものと然程変わらない、コンパクトかつシンプルなもので、戦闘曲というにはいささか迫力不足です。

 

実はここにも、スタッフ達の驚くべき工夫が隠されていました!

 

まず、ピクミン4のボスBGMは、大きく分けて3種類の「基本BGM」があります。

・大ボス戦

・中ボス戦1

・中ボス戦2

これら3種類の基本BGMに、ボス敵ごとの専用ミニマルBGMを組み合わせることでボスとの戦闘BGMが作られています。

 

つまり、ピクミン4のボス曲は

3種類の基本BGM+ボスそれぞれのミニマルBGM

という2つの曲の組み合わせでできており、この組み合わせを変えることによって「似ているようで全然違う」20種類以上の戦闘曲を作り出すという、驚くべき仕掛けになっているのです。

 

(例外としてダマグモインフェルノ戦は、イントロこそ大ボス戦の基本BGMと同じですが、それ以外は完全に独立した正真正銘の完全専用BGMとなっています。なんという優遇ぶり。

)

3種類の基本BGMはいずれもボスらしい迫力ある曲になっています。しかしそれだけでは没個性的で、逆にミニマルBGMだけではボスとして迫力不足。どちらかが欠けても成立しません。基本BGMによって迫力を、そしてミニマルBGMによってボスの個性を相互に演出し合うという工夫がなされているのです。

 

この仕組みを解き明かすために参考にした興味深い生物として、

・けだもののゆりかご2階にいるハリアラ

が挙げられます。実際に見てみましょう。

 

リアラシはれっきとした中ボスなのですが、このステージではなんと通常の雑魚敵としてウロチョロしています。ちょっと近づいてみましょう。


www.youtube.com

リアラシに近づいた途端、おもちゃの木琴のような、チョロチョロした可愛い音が聞こえ始めたことが分かるでしょうか。そう、これがハリアラシのミニマルBGMです。

 

ここでは中ボスとしての登場では無いので、ボスの基本BGMが抜けてミニマルBGMだけが流れているのです。このままではボス戦というには流石に迫力不足ですね。

 

それでは、ハリアラシがちゃんと中ボスとして登場するステージに行ってみましょう。


www.youtube.com

ドラムロールから始まる激しい打楽器の音!これが基本BGMの一つである、中ボス戦1のイントロです!よく聞いてみると、これにさっきのチョロチョロしたハリアラシ専用ミニマルBGMが重なっていることが分かると思います。

 

中ボス戦1+ハリアラシのミニマルBGM。これで中ボスとしてのハリアラシの戦闘BGMが完成するわけです。一気にボスらしい迫力が出ましたね!

 

今回は過度なネタバレ防止のため、体験版でも出てくるハリアラシのみを紹介しましたが、ピクミン4では以前中ボスとして出てきた敵が雑魚敵として登場したり、大ボスだった敵が中ボスになっていたりすることが多々あります。

 

そのため、基本BGM+専用ミニマルBGMの組み合わせで戦闘曲を作るという手法は、敵の個性を演出しつつ、その時の役割に応じて違った戦闘曲を与えることができるという点でも柔軟なシステムであると言えるでしょう。

オリマー遭難記では?】

ここまで、ピクミン4の独特な音楽システムについて解説してきましたが、初代ピクミンのリブートとも言えるモード、オリマー遭難記ではどうでしょうか。

 

オリマー遭難記では、敵キャラごとのミニマルBGMというシステムは無くなっており、ステージBGMに過去作における敵接近BGMのフレーズがアレンジされて盛り込まれています。(とこなぎの浜辺のステージBGMに初代の大水源の敵接近BGMが混じっているなど。それ以外にも過去作ステージのBGMのワンフレーズが使われているところはかなり多いので、シリーズファンの方はじっくり聴いて探してみてください。)

 

また、ステージBGM自体もオリマー遭難記専用のものが使われています。これは原生生物達のミニマルBGMと組み合わせて完成する本編のステージBGMとは違い、従来の通り単体で完成された音楽になっており、シリーズファンにとってはこちらの方が耳に馴染むかもしれません。

 

ボス戦BGMも全ボス共通でピクミン2のボス戦アレンジが使用されています。

 

ただでさえ過去作のオマージュたっぷりなモードですが、BGMの雰囲気に関しても過去作を再現しているわけですね。

【まとめ】

まとめると、ピクミン4では原生生物1匹1匹が専用のミニマルBGMを持っていて、彼らに近づくたびにステージBGMやボス戦BGMに違った変化が生まれるという、とても面白い仕掛けが隠されていました。

 

実は、ぼくがこの記事を書いたきっかけの一つは、「ピクミン4の音楽は地味で印象に残りにくい。」という意見をたくさん目にしたからです。

 

実際ぼく自身も最初はそう思っていました。しかし、「原生生物との出会いによって次々とBGMに変化が生まれ、一見地味だったBGMが彩られていく。」という粋な演出に気づいたことで一気に見える景色が変わり、1人でも多くの方にこれを知ってほしいという思いで今回の記事を書きました。

 

今回は過度なネタバレ防止のため、体験版で出会える生物と、発売前に公式で登場することが発表されていた生物のみを例に出しましたが、他にもたくさんの原生生物が多種多様なミニマルBGMを持っています!

 

これからピクミン4を遊ぶ人も、2周目に挑戦する人も、冒険の途中で時々BGMの細かな変化に耳を傾けてみるというのはいかがでしょうか。よーく聞いてみないと気づかないような、小さな小さな変化ではありますが、きっとピクミンの世界での冒険をさらに豊かにしてくれるはずです。

 

今回はここまで。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!!

 

える虫